高城剛メルマガ「高城未来研究所「Future Report」」より

アーユルヴェーダについて

高城未来研究所【Future Report】Vol.701(11月22日)より

今週は、スリランカ全土を走りめぐっています。

およそ13年ぶりに、アーユルヴェーダに関する新刊を書こうと思いまして、新旧含め主だったスリランカにあるリトリートをすべてまわって、全施設で施術を受け、医師と話し、日本人にとって良さそうな滞在先を見つけています。

アーユルヴェーダは、インドに起源を持つ伝統医学で、「生命の科学」を意味しますが、「生きるための知恵」と言い換えてもいいかもしれません。
「アーユス(Ayus)」はサンスクリット語で「生命」、「ヴェーダ(Veda)」は「知識」や「科学」を指し、その歴史は5000年以上にわたり、人間の心身と自然との調和を通じて健康を維持し、病気を予防するための体系として南アジアを中心に発展してきました。
僕も15年以上、スリランカ及び南インドのアーユルヴェーダの施設に定期的に訪れ、自分なりに体感を得ながら学び続けてきました。

まず、ベースとなるのがトリ・ドーシャ理論です。
アーユルヴェーダでは、人体と宇宙は5つの基本元素(地、水、火、風、空)から成り立っていると考えられており、この5元素が3つのエネルギー、または「ドーシャ」と呼ばれる生命の原理を形成します。

その3つのエネルギーとは

・ヴァータ(Vata):空と風の要素を持ち、動きや活動、神経系の働きを司る。
・ピッタ(Pitta):火と水の要素を持ち、代謝や消化、体温調節を司る。
・カパ(Kapha):水と地の要素を持ち、体の安定性や免疫力、潤いを保つ。

に分けられ、人それぞれに独自の「ドーシャの構成比」があり、これを「プラクリティ(体質)」と呼びます。
健康の鍵は、この生まれ持ったドーシャのバランスを保つことにあるとされ、言うならば、プラクリティによる診断は、太古の遺伝子検査に他なりません。

アーユルヴェーダが目指すのは、「心」「体」「魂」の調和が取れている状態を健康と定義し、単に病気がない状態ではなく、内外の平和と幸福感が重要とされます。
つまり、永続的に幸せが続く状態を求める人生の術なのです。

そこで、自然界のリズムや季節の変化に対応し、自己治癒力を高めることが基盤となります。
食事、ライフスタイル、薬草、ヨガ、瞑想などがその手段として用いられますが、アーユルヴェーダの健康へのアプローチは、症状を抑えるだけでなく、根本原因に働きかけることを目指し、そのため個別化された診断がとても重要です。

そこで、前述したドーシャの不均衡を調整するため、鍵となるのが食事療法です。
食事は、アーユルヴェーダで最も重要な治療法の一つとされており、単に食材や調理法だけでなく、食べる時間や季節に応じた食事が健康に大きく影響すると考えられます。

一例を挙げれば

・ヴァータを鎮める:温かく油分の多い食事(スープ、ナッツ、温かい牛乳など)
・ピッタを鎮める:冷たい食べ物や甘味・苦味のある食品(ココナッツ、キュウリ、ミントなど)
・カパを鎮める:軽い食事や刺激的な食品(スパイス、野菜スープ、豆類など)

があります。
この食事療法と並行して行われるのが、アーユルヴェーダ独特の施術で、特に有名なのがパンチャカルマです。
パンチャカルマは、毒素(アーマ)を体から取り除く浄化療法、つまりデトックスで、オイルマッサージやハーブ療法、断食、浣腸などで、体内環境をリセットします。

これらは体内に蓄積された毒素(アーマ)を排出し、心身のバランスを取り戻すための一連の治療法で、「パンチャ」はサンスクリット語で「5」、「カルマ」は「行為」や「手法」を意味し、5つの浄化法を中心とした治療プロセスが特徴です。

パンチャカルマは、病気の予防だけでなく治療を目的とした深いデトックス療法で、心身をリセットします。
これにより、ドーシャ(ヴァータ、ピッタ、カパ)のバランスを整え、健康と活力を取り戻すのです。

ただし、日本で同様の施術を施すのは難しいと感じています。
スリランカや南インドなど自然豊かの中で、古くからのノウハウが残っている施設やドクターとともに取り行わなければ、良い結果になるとは考えられません。
なぜなら、心身と魂の調和は環境や地の食材やハーブも多いに影響するからで、そのため、定期的に南アジアへ訪れている次第です。

渡航中、粟からできたパンを何度か食べました。
これが実においしい!
現代病の大半は、本質的には「金持ち病」なのだろうと実感する今週です。

今回は、もうじき8weeks.aiで公開する「アーユルヴェーダ診断」の精度を上げるため、医師と同行しながら現地で何人ものドクターとお目にかかり、知見を高めています。
こちらの公開もお楽しみに。
 

高城未来研究所「Future Report」

Vol.701 11月22日発行

■目次
1. 近況
2. 世界の俯瞰図
3. デュアルライフ、ハイパーノマドのススメ
4. 「病」との対話
5. 大ビジュアルコミュニケーション時代を生き抜く方法
6. Q&Aコーナー
7. 連載のお知らせ

23高城未来研究所は、近未来を読み解く総合研究所です。実際に海外を飛び回って現場を見てまわる僕を中心に、世界情勢や経済だけではなく、移住や海外就職のプロフェッショナルなど、多岐にわたる多くの研究員が、企業と個人を顧客に未来を個別にコンサルティングをしていきます。毎週お届けする「FutureReport」は、この研究所の定期レポートで、今後世界はどのように変わっていくのか、そして、何に気をつけ、何をしなくてはいけないのか、をマスでは発言できない私見と俯瞰的視座をあわせてお届けします。

高城剛
1964年葛飾柴又生まれ。日大芸術学部在学中に「東京国際ビデオビエンナーレ」グランプリ受賞後、メディアを超えて横断的に活動。 著書に『ヤバいぜっ! デジタル日本』(集英社)、『「ひきこもり国家」日本』(宝島社)、『オーガニック革命』(集英社)、『私の名前は高城剛。住所不定、職業不明。』(マガジンハウス)などがある。 自身も数多くのメディアに登場し、NTT、パナソニック、プレイステーション、ヴァージン・アトランティックなどの広告に出演。 総務省情報通信審議会専門委員など公職歴任。 2008年より、拠点を欧州へ移し活動。 現在、コミュニケーション戦略と次世代テクノロジーを専門に、創造産業全般にわたって活躍。ファッションTVシニア・クリエイティブ・ディレクターも務めている。 最新刊は『時代を生きる力』(マガジンハウス)を発売。

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